1種冷凍学識計算講習検定試験攻略-問2:令和2年度

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液ガス熱交換器付きのR404A冷凍装置

 液ガス熱交換器の熱収支がポイントです。使用目的の記述がありますが過去に何度も出題されています。

第一種冷凍 令和2年度 問2 液ガス熱交換器

問2 下図に示す液ガス熱交換器付きのR404A冷凍装置が次の条件で運転されている。次の(1)の問に、解答用紙の所定欄に計算式を示して答えよ。また(2)の問に答えよ。
 ただし、圧縮機の機械的摩擦損失仕事は吐出しガスに熱として加わるものとする。また、配管での熱の出入りおよび圧力損失はないものとする。

(20点)

第一種冷凍機械責任者試験問2(令和2年度)の問題図

(条件)
 圧縮機の吸込み蒸気の比エンタルピー       h1 = 374 kJ/kg
 断熱圧縮後の圧縮機吐出しガスの比エンタルピー  h2 = 418 kJ/kg
 受液器出口の冷媒液の比エンタルピー       h3 = 238 kJ/kg
 膨張弁手前の冷媒液の比エンタルピー       h4 = 215 kJ/kg
 冷凍能力       Φo = 100 kW
 圧縮機の断熱効率   ηc = 0.75
 圧縮機の機械効率   ηm = 0.90

  (1) 液ガス熱交換器における熱交換量Φh(kW)およびこの冷凍装置の実際の成績係数(COP)Rをそれぞれ求めよ。

  (2) 液ガス熱交換器の主な使用目的を2つ記せ。

(1) 液ガス熱交換器における熱交換量Φh(kW)およびこの冷凍装置の実際の成績係数(COP)Rをそれぞれ求めよ。

熱交換量Φh(kW)

 熱交換量Φhを求めるにはは、液ガス熱交換器の熱収支がカギです。

液ガス熱交換器p-h線図

 熱交換量を求める式は、

   Φh = qmr(h3 - h4) …(1)

 この(1)式で、数値がわからないものは冷媒循環量qmrです。

 qmrは、冷凍能力Φoが100kWと指定されているので、下記の(2)式から求められます。

 Φo = qmr(h6 - h5) …(2)

 最初にh6を求め、(2)式よりqmrを求め、Φhを求めればよいでしょう。


液ガス熱交換器概略図

 では、h6を求めます。さて、ここがこの問題のポイントです!液ガス熱交換器の熱収支を考えます。

 流入するもの左辺に、流出するもの右辺に、まとめてみましょう。(図をよく見てください、概略図を切り取ってあります。)

   h3 + h6h4 + h1 …(3)

 この式は、

h3 - h4 = h1 - h6 …(4)

 と、なります。この式は、p-h線図を見てください。凝縮器の液側と圧縮機出口のガス側の交換熱量が等しいという式になります。 ま、このことを知っていて(4)式を丸暗記でもいいんですけどね。


 では、(3)式を使ってh6を求めます。

 ここに、h4 = h5

   h6 = h4 + h1 - h3

     = 215 + 374 - 238

     = 351

 では、(2)式からqmrを求めます。

数値代入して、qmrを求める。

 これで、Φhが求められます。

   Φh = qmr(h3 - h4)

      = 0.735×(238 - 215)

      = 0.735×23 = 16.905

      ≒ 16.9

 こっちでも、同じです。

   Φh = qmr(h1 - h6)

      = 0.735×(374 - 351)

      = 0.735×23 = 16.905

      ≒ 16.9


実際の成績係数(COP)Rを求めましょう。

 普通に(COP)Rを求めます。(h2で計算する場合は、(ηcηm)をお忘れなきよう。)

 下記はh6を求められないとできません。

   成績係数を求める。1


 もう一つの方法は、h6を使わなくてもできます。(分かりやすいので、h2´を用います。)

Φo = Φk - P

  = qmr(h2´- h3) - qmr(h2´- h1)

  = qmr(h2´- h3 - h2´+ h1)

  = qmr(h1 - h3)


 いきなり、  Φo=qmr(h1-h3) である。 と記述しても良いでしょう。

h2´を求める。

 では、数値代入しましょ。

   成績係数を求める。2


 どちらの方法も正解ですが、求めたh6を使ったほうがスマートかなぁ、と思います。


  答え Φh = 16.9〔kW〕 (COP)R = 2.1

(2) 液ガス熱交換器の主な使用目的を2つ記せ。

 これは「保安管理技術」のような問題だけども…。テキスト『上級 冷凍受験テキスト:日本冷凍空調学会』<9次(8次):P20左 1)~2)>

  1. 蒸発器を出る冷媒蒸気を適度に過熱させた湿り蒸気を吸込み、圧縮機が湿り圧縮または液圧縮を防ぐ。
     (「過熱」を「加熱」と書かないこと。減点されると思う。)
  2. 凝縮器出口からの高圧液の過冷却度を大きくして、液管でのフラッシュガスの発生を防ぐ。

 「適度に過熱させ」「湿り圧縮」「液圧縮」「高圧液」「過冷却度を大きく」「フラッシュガス」、この辺りの語句が入っていれば点をくれるかと思う。

訂正箇所履歴

【2020(R02)/12/03 新設】

  • 「凝縮器の凝縮負荷   Φk = 100 kW」 → 「冷凍能力   Φo = 100 kW」に修正。(2020(R02)/12/09)
  • 「この(1)式で、数値がわからないものは冷媒循環量qmrと、蒸発器入口(膨張弁出口)の比エンタルピーh6です。」→ 「この(1)式で、数値がわからないものは冷媒循環量qmrです。」に変更。(2020(R02)/12/12)
  • 文章を全般的に見直し。(2020(R02)/12/12)
  • 『上級 冷凍受験テキスト』9次改訂版に対応。(2023(R05)/06/01)