学識編:冷媒の諸特性P65~P67 (P67~P69)

 冷媒の性質や特徴です。思いがけない年度に、思いがけないところが、出題されるかもしれません。

テキスト9次改訂版について

 『上級 受検テキスト:日本冷凍空調学会』9次改訂版(令和4年11月8日改訂)に対応しています。適当に、8次改訂版のページを( )内に残してあります。


9次改訂版の目次

 8次改訂版の文章が見直され「加工油と溶解性」の項目が増えています。下記の9次改訂版の項目(目次)に沿って問題を並べます。

  • 5.7 冷媒の諸特性 P65~67
    • 5.7.1 化学的安定性 P65
    • 5.7.2 毒性及び燃焼性 P65~66
    • 5.7.3 金属材料への影響 P66
    • 5.7.4 溶解性、膨潤作用 P66
    • 5.7.5 電気的性質 P66~67
    • 5.7.6 水分の影響 P67
    • 5.7.7 乾燥剤の選定 P67
    • 5.7.8 加工油と溶解性 P67

冷媒の諸特性 P65~P67

 冷媒種類まとめ表を貼っておきます。

冷媒種類まとめ表
冷媒の種類まとめ表 <<拡大>>


化学的安定性 P65

・塩素を含まないHFC冷媒は、一般的には塩素を含むHCFC冷媒よりも冷媒自体の熱安定性は高い。 H18学/09 答え

【◯】 塩素の関係をよく覚えよう。テキスト<9次:P65右 12行目~>

・HFC冷媒は、HCFC冷媒よりも熱安定性が高いので、装置から漏えいした冷媒ガスが火炎のような高温にさらされても、熱分解や化学変化により有毒ガスを発生することはない。 H21学/09 答え

【×】 「そんなことはない」と、なんとなく思う問題。テキスト<9次:P65右 15行目~>

・HFC冷媒は熱安定性が高いので、冷凍機油、微量の水分、金属などと接触していて、温度が高くなっても影響がなく安定している。 by echo 答え

【×】 ぅむ。

・フルオロカーボン冷凍装置内の冷媒は、冷凍機油、微量の水分、金属などと接触していて、温度が高くなると冷媒だけの場合よりも科学的安定性が悪くなるので、圧縮機吐出しガス温度が高くなり過ぎないように運転しなければならない。 H21学/09 答え

【◯】 文章は長いが当然のことを言っている。

・HFC系冷媒はHCFC系冷媒よりも一般に冷媒自体の熱安定性が低く、火炎や高温にさらされると熱分解や化学変化を起こして有毒ガスを発生する。 H28学/09 答え

【×】 正しい文章にしてみましょう。

 HFC系冷媒はHCFC系冷媒よりも一般に冷媒自体の熱安定性が高いが、火炎や高温にさらされると熱分解や化学変化を起こして有毒ガスを発生する。

・HFC系冷媒は、HCFC系冷媒よりも一般に冷媒自体の熱安定性が高いが、火炎や高温にさらされると熱分解や化学変化を起こして有毒ガスを発生する。 H30学/09 答え

【◯】 今度は、◯です。

・フルオロカーボン冷凍装置内の冷媒は、冷凍機油、微量の水分、金属などと接触しているので、冷媒だけの場合よりも化学的安定性が低下し、高温になると分解しやすくなる。そのため、圧縮機吐出しガス温度が高くなり過ぎないように運転しなければならない。 R04学/09 答え

【◯】 ぅむ、良い問題ですね。テキスト<9次:P65右上 冒頭~>


毒性及び燃焼性 P65~P66

 3冷で使っている「冷媒の毒性と燃焼性の比較表」を貼っておきます。(上級テキスト<8次:P65>では、冷媒の毒性のみで、『初級冷凍受験テキスト』のように燃焼性に触れていないが、次の改訂版では触れてくるかもしれない。)

 9次改訂版では、燃焼性が記されている。テキスト<9次:P66 表5.4>



冷媒の毒性と燃焼性の比較表
冷媒の毒性と燃焼性の比較表<<拡大>>

・フッ素系冷媒の毒性は弱いので、大量の冷媒が空気中に含まれていても安心安全である。 by echo 答え

【×】 んなこたぁ~ない。酸素欠乏による窒息事故や麻酔事故を起こします。酸欠は怖い。テキスト<9次:P66左 2行目~>

・アンモニアは自然冷媒に分類されるので、毒性と燃焼性ともに弱い。 by echo 答え

【×】 アンモニア(R717)は、強毒・可燃性ガスです。テキスト<9次:P65右 下から4行目~>

・二酸化炭素冷媒は、不活性ガスであり、それが室内に多量に漏えいして高濃度になっても安全である。 H22学/09 答え

【×】 ん、なこたぁ~ない。酸欠は怖い。テキスト<9次:P66左 2行目~><

・二酸化炭素は、ヒートポンプ式給湯機などに利用されている。これは、地球温暖化係数(GWP)がゼロであり、かつ、毒性がないためである。 H25学/09 答え

【×】 この問題はココ。GWPはゼロではなく、低い。毒性はないことはない、弱い。(テキスト9次改訂版では、これの該当箇所が無くなってしまった。)
冷媒種類まとめ表
冷媒の種類まとめ表 <<拡大>>


金属材料への影響 P66

 見当たらない。(予想問題 by echo を追加。)

・フルオロカーボン冷媒は、銅や銅合金を含む通常の金属材料を腐食することはないが、2%を超えるマグネシウムを含有するアルミニウム合金に対し腐食性があるので使用してはならない。 by echo 答え

【◯】 フッ素系冷媒の金属に対する一番の特徴ですね。テキスト<9次:P66右>

・アンモニア冷媒は、鋼および銅や銅合金に腐食性がある。 by echo 答え

【×】 こんなヒドい問題は出ないかな。「鋼」には腐食性がありません!(「鋼」と「銅」の読み(見)間違いに注意。)テキスト<9次:P66右>


溶解性、膨潤作用 P66

 見当たらない。(予想問題 by echo を追加。)

「膨潤」とは「膨張」のこと

・フッ素系冷媒の膨潤作用とは冷媒の浸透によって材料を膨張させたりする。また、プラスチックやゴムなどの有機物への溶解性があるため、冷凍設備機器構成材料の選定には十分な注意が必要である。 by echo 答え

【◯】 「膨潤作用」と「溶解性」を、頭の片隅においておこう。テキスト<9次:P66右>

・一般的に、HCFC系冷媒の膨潤作用はHFC系冷媒よりも小さい。 by echo 答え

【×】 逆です。テキスト<9次:P66右 下から6行目>

一般的に、HFC系冷媒の膨潤作用はHCFC系冷媒よりも小さい。

 ちょと、表を張っておくね。種類を把握してイメージ作ってください。
HCFCとHFC冷媒の比較表
HCFCとHFC冷媒の比較表<<拡大>>


電気的性質 P66~67

・フルオロカーボン冷媒は、一般に電気抵抗が小さく、絶縁破壊を起こしにくい。 H13学/09
 答え

【×】 一般に電気抵抗は大きく、絶縁破壊を起こしにくい。(密閉式圧縮機に最適)テキスト<9次:P66右下~P67左上>

・フッ素系冷媒の電気絶縁性は高いが、HFC系冷媒の電気絶縁性はHCFC系冷媒に比べ低い場合がある。 by echo 答え

【◯】 HFC系冷媒のほうが誘電率がHCFC系冷媒より大きいから。テキスト<9次:P67左 2行目~>

 ちょと、表を張っておくね。イメージ作ってください。(ふと思う、HCFC冷媒は全廃なのにテキストにはいまだに登場してるってのが腑に落ちない。いずれ…。)
HCFCとHFC冷媒の比較表
HCFCとHFC冷媒の比較表<<拡大>>


水分による影響 P67

 水分混入に関しては、テキスト16章<9次:P227 16.2.1 水分混入の防止>にも記されているので、同様の問題が「保安管理技術」試験の問4(冷媒の性質)辺りでも出題されている。「学識」ではレアな問題。

フルオロカーボンの場合

・フルオロカーボン冷媒に水分が混入すると、冷媒が加水分解を起こして腐食の原因となるが、冷凍機油は加水分解しない。 H18学/09 答え

【×】 冷凍機油も加水分解して劣化する。
 加水分解とは、ま、塩分と酸になると考えればいいかなぁ、凄く腐食するイメージだよね。テキスト<9次:P67左 12行目>

・フルオロカーボン冷媒に水分が混入すると、水分が氷結して、膨張弁やキャピラリーチューブを詰まらせることがある。 by echo 答え

【◯】 ぅむ。テキスト<9次:P67左 14行目>

【参考】
 この水分混入は、保安の16章<9次:P227 16.2.1 水分混入の防止>にも記されているので、「保安管理技術」試験の問4(冷媒の性質)辺りで(でも)、出題されると思う。

アンモニアの場合

 9次改訂版では8次から削除された文面の過去問題がある。そのプチ解説には、<8次:>のまま()付きで、記してあります。

・蒸発器内のアンモニア冷媒液に水分が溶け込むと、同じ蒸発温度での蒸気圧が下がるため、圧縮機吸込み蒸気の比体積は小さくなる。 H18学/09 答え

【×】 ぅ~ん、これはアンモニアと水との関係テキスト(<8次:P69左下辺り(5.6.6 水分による影響)>)にさりげなく書かれているんだけど…
比体積は大きくなる が正解、比体積が大きい(密度が小さくなる(アンモニア蒸気が薄くなる))ので、冷凍能力は低下する。

【 9次改訂版についての補足 】
 9次改訂版では、この文面が無くなってしまった。よって同様な問題は出題されないと思われる。(2023(R05)/09/09記ス)

・アンモニア冷凍装置の蒸発器内のアンモニア冷媒液に水分の溶け込み量が多くなると、同じ蒸発温度で平衡する蒸気圧が下がり、圧縮機の吸込み蒸気の比体積が小さくなるので、装置の冷凍能力が低下する。 H21学/09 H30学/09 答え

【×】 はい、  比体積が大きくなるので (冷媒蒸気が薄くなる)のです。
 テキスト(<8次:P69左下辺り(5.6.6 水分による影響)>)

【 9次改訂版についての補足 】
 9次改訂版では、この文面が無くなってしまった。よって同様な問題は出題されないと思われる。(2023(R05)/09/09記ス)

・蒸発器内のアンモニア冷媒液に水分が溶け込むと、同じ蒸発温度での蒸気圧が下がり、圧縮機吸込み蒸気の比体積は大きくなり、装置の冷凍能力が低下する。 H26学/09 答え

【◯】 楽勝だ! テキスト(<8次:P69左下辺り(5.6.6 水分による影響)>)ズバリです。
 アンモニア冷媒液水分溶けこむ → 同じ蒸発温度で平衡する蒸気圧下がる → 圧縮機吸込み蒸気比体積大きく(密度小さく)なる → 冷凍能力低下する

【 9次改訂版についての補足 】
 9次改訂版では、この文面が無くなってしまった。よって同様な問題は出題されないと思われる。(2023(R05)/09/09記ス)

・アンモニアは水とよく混ざり、科学的に安定したアンモニア水溶液になるが、銅、アルミニウム、亜鉛メッキを腐食するので、アンモニアへの水分混入は極力さける。 by echo 答え

【◯】 ぅむ、9次改訂版ではこの程度の文章しか記されていない。テキスト<9次:P67左下>

・アンモニアへ水分が混入した場合、冷凍機油を乳化させることがある。 by echo 答え

【◯】 テキスト<9次:P67左一番下>


乾燥剤の選定 P67

 見当たらない。(予想問題 by echo を追加。)

・冷媒系統に、科学的に安定しているシリカゲル、ソバビート、ゼオライトなどの乾燥剤を封入したドライヤを設置する。これは、混入した水分を除去することが目的である。 by echo 答え

【◯】 テキスト<9次:P67右 3行目~>

・ドライヤに封入する乾燥剤は水分を吸着しやすいので、交換時や大気に触れないよう密閉容器に保管する等に注意する。また、乾燥剤内部の微細粉は運転時に冷媒サイクル内の細管部で目詰まりなどを起こすのでできるだけ除去する。 by echo 答え

【◯】 テキスト<9次:P69右 6行目~>


加工油と溶解性 P67

 9次改訂版から追加された。(2023(R05)/09/09記ス)

・冷凍装置の配管や圧縮機部品加工に使用される切削加工油は、微量であれば残留しても問題はない。 by echo 答え

【×】 そんなことはない。粘着性のスラッジが発生したり、溶解せずに冷媒とともに流れて目詰まりの原因になる。テキスト<9次:P67右>

 22/03/16 23/09/09

Back to top ↑

修正・訂正箇所履歴

【2022(R04)/03/09 新設】(← 履歴をここに作った日

  • 学識編ページを分割、このページを新設。(2022(R03)/03/09)
  • 全体的に見直し、及び予想問題 by echo 追加。(2022(R04)/03/16)
  • 『上級 受検テキスト:日本冷凍空調学会』9次改訂版(令和4年11月8日改訂)に対応。(2023(R05)/09/09)
  • 問題分類など見直し。(2023(R05)/09/09)

Back to top ↑

【参考文献・リンク】

  • 初級 受検テキスト(SIによる初級受検テキスト):日本冷凍空調学会
  • 上級 受検テキスト(SIによる上級受検テキスト):日本冷凍空調学会
  • 冷凍機械責任者(1・2・3冷)試験問題と解答例(13):日本冷凍空調学会
  • 第3種冷凍機械責任者試験模範解答集 :電気書院
  • 第1・2種冷凍機械責任者試験模範解答集 :電気書院

Back to top ↑

^